流通コースの概要

 現代社会に生活する私たちは、日常生活に必要なさまざまな商品を消費しています。そしてこれらの商品は、そのほとんどが他人(企業)の生産したものです。私たちは、これらの商品を、必要な時に、必要な量、手に入れることにより、何不自由なく生活を送ることができるのです。

 流通とは、生産と消費を結びつける役割をするものです。商品が生産者から消費者に供給されるまでの社会的経済的移転を流通といいます。円滑な日常生活が送れるのも、流通という重要な働きがあるからです。これがうまくいかないと、経済も国民生活も混乱してしまいます。

 流通の主たる担い手が卸売業、小売業です。わが国には卸売商店約48万店、小売商店約160万店、従業者数は卸売業で約480万人、小売業に約690万人、併せて1千万人以上の人が就業しています。私たちは卸売業と直接、取引がありませんからつい見落としがちですが、大変重要な働きをしています。ひとくちに卸売業、小売業といってもそこには種々のタイプがあります。たとえば小売業では、みなさんがよく利用される24時間営業のコンビニエンス・ストア、百貨店、スーパー、ディスカウント・ストアなどがあります。これらの小売業はそれぞれ特徴をもっています。

 さて、流通は消費財流通だけに限りません。産業材の流通もあります。原料流通、素材流通、部品流通というようにさまざまな流通を見ることができます。また(産業)廃棄物流通もあります。ですから、ひとことで流通といっても、その範囲の広さに驚かれるでしょう。また、円滑な流通活動のためには卸売業、小売業だけではなく、輸送、保管、保険、金融などさまざまな働きが必要となります。

 少し企業の視点から見てみましょう。商品は消費されるためにつくられています。生産者が、消費者ニーズを無視して、漠然と商品を作っていては消費者は注目しませんし、そのような商品は誰も買ってくれません。自己の市場もライバル企業に奪われかねません。自己の商品を最終消費者市場に供給するために、企業はいろいろな活動が必要になります。市場調査も必要ですし、製品政策、販売経路政策、価格政策、プロモーションなどが重要になります。消費者が品質、機能、便利性、快適性などを追求する時代にあって、消費者のニーズは個性化、多様化、高度化しています。生産者は消費者が何を考え、何を求めているのかを把握しなければなりません。

 また、生産者は消費者のニーズに適合した商品の提供につとめる一方で、資源の枯渇、環境についても配慮することが求められます。さらに自己の商品をどのような道筋によって流すのかといった販売経路の問題、消費者の商品選択に大きく影響する価格の問題もあります。生産者が消費者のニーズや欲求にマッチした商品をつくったとしても、消費者がその商品の存在やその良さなどを知らなければ、また、商品の需要が喚起、刺激されなければ、購買につながらないでしょう。そこで商品の存在、効用、その商品が購買できる場所などを消費者に「広く告げる=広く知らせる」ことが重要になります。ここに広告などのプロモーションが必要不可欠となります。常に生産者は自己の商品を積極的に市場に働きかけていかなければなりません。「販売なくして事業なし」です。

 流通コースでは、生産と消費を結びつけ、円滑な国民経済を実現させている流通について、生産者が最終消費者市場に円滑かつ効果的に販売するためのさまざまな積極的活動や方法、さらには国際的視点からの流通(国際流通)を体系的に学ぶことができます。流通を学ぶ上で歴史的視点も欠かせません。歴史的視点は、よりいっそうの本質的理解に役立つでしょう。

 このような視点から、流通コースでは、「商学総論」、「マーケティング論」、「広告論」、「消費者行動論」、「流通論」、「貿易論」、「保険論」、「商業史」、「国際マーケティング論」、「実用英語」、「リスクマネジメント論」、「企業論」、「経営データ解析」、「経営学通論」、「外国書講読」などの科目が核科目として開設されています。流通に関する専門的知識を得るためには、流通コースを選択することをお勧めします。このほかにも関連科目がありますから、みなさんで自分の関心にあわせて履修してください。

 今日、価格破壊、規制緩和、商店街衰退、消費財メーカーの販売経路の見直しなど、流通はめまぐるしく変化しています。流通の動向を深く理解するにも専門的知識が求められています。それを流通コースで学んで下さい。